クジャリネットをはじめてから、二人目の先生に出会う。
今度の先生は、クラシック畑を順調に進んだのちに、フリージャズに巻き込まれて、いまはどうやらブラジルのショーロ岸辺にたどりついている、さまざまなシーンで活躍中のケイコさん。繊細なアンサンブルから、音量勝負のガテン現場をこなすケイコさんですが、実はわたしはケイコさんがアルト/ソプラノサックスを吹いているところしか観たことがない。クラリネットのうわさはかねがね聞いていたし、音楽教室でもいつも教えられているということだし、クラシックの基礎をちゃんと身につけている奏者の方のクラリネットに接したいという気もちがあってレッスンをお願いした。いままで何度も現場で一緒になったり、ツアーもともにしてきたけれど、楽器を演奏する側として会うのははじめなので、なんだか照れくさい。
まず最初は四方山話的な流れで「どんなクラリネットを吹きたいか」というお話に。「クラリネットというとブラスバンドやジャズのイメージが強いかもしれないけれど、クレズマーだったり、ちんどんだったり、いろいろな音楽のスタイルがあるのよね。ジャンルではなくて、なにをやりたいか、ということが大事だとおもうよ」。わたしはクラリネットの音楽リスナーとしてはほとんど幼稚園以下というか、まったくもって未熟なのだけど、それでもこの半年、自分が演奏することを考えてすこしずつ意識的に聴く/観てきたところ、なんとなく、「クラリネットでやりたいこと」がぼんやりと生まれつつあった。とはいえ、ほんとうにあいまいなものだったので、そこにふと「アコーディオンとクラリネットのデュオとかかわいらしいと思うよ」といわれて、わわっ、そういうもの好きです、と自分で気づいてビックリした。
歌声のかわりに、クラリネットで歌いたい。なんとなくイメージにはあったのだけど、おしゃべりのなかから、具体的なイメージが引き出されてくる。アコースティックでギターと一緒に演奏したりしたいなあ。穏やかなエレクトロニカと一緒に吹いたりとか。ベースとクラというのもアリかな。きれいでかわいいメロディをクラリネットで吹きたいな。
「とくにクラシックにこだわる必要はないけれど、やりたい音楽が表わせられるようなテクニックを身につけるとアイディアは広がるかもね」
そう、それです!
ただおしゃべりをしていただけなのに、自分のなかで「こうかな」「あれかな」とボンヤリしていた欲求やイメージが形を獲ていく。もちろん、ただ輪郭が見えてきただけで、まだ何もはじまっていないのではあるのだけど。
おしゃべりというか問診ののちに、実際に楽器を組み立ててレッスンスタート。
<呼吸について>
・まず体の中に残っていた空気をすべて吐く。深く口から息を吸って、背中やわき腹のあたりに貯める。吹く直前に胸を開いて残りすこしだけ空気を吸い、キープしてから吹く。そうすると音の密度が高くなり、濃い音を保つことができる。
・吸い込んだ反動でそのまま吹かない。
・吹くときにお腹をへこませて吐き出すのではなく、空気が下腹部やわき腹や背中の外に出て行ってからだが外にパーンと張るようにイメージする。
・後ろからドンと押されても倒れないように重心を安定させる。膝をすこしだけ緩ませて、足指に力がかかるように立つ。
・クラリネットをくわえたままブレスをとるときは唇の端から。絶対にクラリネット内部から吸わない(無意識にこれをやっていたみたい)。
・指遣いと息は別ものと考える。指に気をとられて息が不安定にならないように。
<改善点>
・あごをひきすぎない。
・楽器をもうすこし立てて(前に出して)吹くいていいのでは。
・両手で楽器を上にあげて前歯で押えるようにする。
・音が上向きに出て行くイメージで吹く。
・音量が小さい。意識的に吹き分けているのなら問題は無いが、単純に「出せる音が小さい」のは問題なので、息の出し方を気をつけてきちんと吹く。
エチュードを吹いて、呼吸方法をメインに授業がすすむ。初期の、まだ音も出せなかったころに、帽子先生(わたしの一人目の先生)に同じようなことを言われていたとは思うのだけど、そのときはよく理解できていなかったり、個人練習をしているうちに自分なりに勝手に変えていたり、ピッチの狂いを直すことを優先して捻じ曲がっていたりしたことを、改めて指摘していただいた。
今までにも何度も言われたことだったりしても、そのときには「はてな?」と思っていたことが、今になってようやく「なるほど!」とわかることができたのだと思う。一人目の先生にも、二人目の先生にも感謝。
マウスピースのみで音階を出す練習。最初は「ド? あ、これはシだ」などと、音をさぐりながらではあったけれど、ピアノの音を聴きながらすこしずつ何がなんだか程度にはわかってくる。ただ指を動かしてブーブーと吹いているだけじゃあしようがないわけだな。
後半はサティの曲をピアノ伴奏に合わせて吹いたりしました。いやあ、三拍子って苦手。譜面を読むのもアワアワしてしまって、二分音符が短くなったりと、簡単な譜面だったのにはずかしい結果に。うーん、まがりなりにもピアノ歴は長かったんだから、譜面くらいはちゃんと読まなくちゃ。指や息の問題があるのだから、そこのストレスは軽くクリアしたい。
2時間ミッチリと教えていただいて、新たな改善点が見えてきたり、先にあるものがなんとなく望めたり。月に一回レッスンをしていただくお願いをして、スキップしながら夕暮れの町を帰る。クラリネットって、おもしろいなあ。